子育て・発達凸凹

【ボク】の物語(第8話)実母に教えられたこと

子供たちで溢れるこのにぎやかな空間の中で、こんなに泣いている大人は私だけだろうか。

それとも、同じように絶望と不安を感じ、泣いていた大人はいるだろうか。

 

やり直せるなら

何も知らずに診断されていれば、こんなに不安にならなかったのかも知れない。

無呼吸の頃から色々と調べすぎた。

沢山の事を知りすぎた。

ウエスト症候群の予後など調べなければよかった。

この先、この子はどうなっていく?

薬で治る?

入院?

食事療法?

外科手術?

 

障害?

車椅子?

介護?

 

いくら考えても将来の事などわかるはずもなく、容易に想像できるわけもない。

不安に押しつぶされそうになる。

鼓動が早まる。

油断するとまた泣きそうになる。

【ボク】の事を見れない。

 

また発作が起きている。

直視できない。

目を背けたい。

全部1からやり直したい

 

 

どこから?

妊娠後期にスーパーでお腹をぶつけてしまう前?

「ちょっとぐらい大丈夫じゃない?」とお寿司を食べてしまう前?

鉄分・葉酸サプリを飲み忘れてしまう前?

つわりでゼリーしか食べられなかったけど、頑張ってバランスよく食べればよかった?

つわりの中、無理して出勤しない方が良かった?

 

妊娠のタイミングが間違ってた?

それとも、それ以前の問題?

私がタバコを吸ったことがあったから?

お酒を飲みすぎた?

子供の頃に遊具から落ちたから?

もっといい行いを沢山してればこんな事にならなかった?

 

それとも…

 

それとも…

 

考えても無駄な事を考えていた。

考えずにはいられなかった。




 

検査入院

赤ちゃんの手

翌日から検査入院をすることになった。

入院準備や手続きは一睡もできなかった身体にはこたえたが、もうそんな感覚もほとんど感じなかった。

 

今回の検査入院ではウエスト症候群の原因を調べるというもの。

様々な検査を3泊4日かけて行う。

  1. ビデオ脳波
  2. MRI
  3. 髄液検査
  4. 血液検査
  5. 尿検査
  6. 視力検査
  7. 発達検査

 

ビデオ脳波とは

ビデオ脳波とは、脳波と発作の動きを同時に記録する為に行う検査。

ビデオは常に稼働し録画。

目視でも観察し、発作が起きた時にボタンを押して記録。

脳のどの部分から発作が始まり、どのように拡がっていくかということが確認できるため、手術や治療に必要な情報を得るために行われる。

睡眠時だけでなく、患者は線が届く範囲で自由に動けるため負担は少ない。

 

この頃、1日に5~8シリーズの発作が起きていた。

1シリーズの回数は10回~50回。

寝ている時にも起こるので、私はベッド横の長椅子で1晩中ボタンを握りしめて過ごした。

 

髄液検査、血液検査、尿検査

□代謝状態

□栄養状態

□特定の物質の過不足

□ホルモンの検査

□免疫の状態

□染色体や遺伝子の変異

を調べるために行う。

 

髄液検査は大人でも耐えがたい痛みを伴うそうで、今回は強めの睡眠薬を飲んで挑むこととなった。

睡眠薬が効き3時間程眠り続けた後、2時間泣き続けた。

医師に「睡眠薬が切れた後は気持ち悪くて不機嫌になるからね」と事前に言われていたので落ち着いて対応できたと思う。

 

生後5カ月の発達

検査入院の際、発達検査もすることとなった。

  • 首すわり⇒〇
  • 寝返り⇒〇
  • 追視⇒人〇、物✖
  • 手指⇒おもちゃを握れない

結果は運動⇒5カ月、認知やその他⇒3カ月、とのこと。

目が合わない事や、抱っこを嫌がる、笑わない、など違和感はかなりあったが、運動面では月齢相当という事でほっとした。

 

実母に教えられたこと

検査入院中に母が会いに来てくれた。

診断された日、「ウエスト症候群やった。明日から検査入院。」とだけラインで知らせていた。

 

せかせかと病室に入ってきたかと思うと、脳波検査の為に頭に大量の線が繋がれている【ボク】を見て驚いている。

「なんでこの子が…」

「信じられへん…」

「なんで…」

と涙ぐんでいる。

 

病気、病院とは無縁の人生を歩んできた母にとって、身内がこんな状態なのがかなりの衝撃だったんだろう。

それを見て、「これは検査の線やから。大丈夫やから。」となだめる。

 

「泣いている人がいるとこっちは冷静になれるもんなんだな」

「それなら、何もせずに一緒に泣いてあげるだけで救われる事は多いのかも知れないな」

「30年生きてきて、そんな事に今更気づくなんて」

つくづく自分の今までの人生が薄っぺらい物だったんだと嫌になる。

 

その時、ノックと共に相変わらずハキハキと話す女医が入ってきた。

「お母さん、今回の検査入院の結果をお話したいんですけどいいですか?

あ、お母さんですか?

一緒に聞かれます?」

 

私は母に視線を送り、それから女医をみて「はい」と答えた。

 

 

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