子育て・発達凸凹

【ボクの物語】(第10話)お姉ちゃん、ごめんね。

検査入院を終え、久しぶりの我が家。

 

大きく息を吸う。

 

「ただいま、だね!」という私の声に、【ボク】は手足をバタバタとさせた。

 




 

割高な粉ミルク

リビング

 

丁寧に靴を揃える。

廊下を抜けた先は見慣れたリビング。

全体をゆっくりと見渡す。

 

 

お姉ちゃんの通園かばんは見当たらない。

「ちゃんと保育園に行ったんだ。」

 

 

朝ご飯にパンを食べたらしい食器は綺麗に洗いあがっている。

パパが洗ったかな?

義母かもしれない。

 

 

机の上に粉ミルクが置いてある。

入院中にLINEで夫に頼んだものだ。

 

レシートを見ると割高な値段

「仕方ないな。」と思った。

「私がいなくちゃダメだな。」とも。

 

 

 

【ボク】を抱っこ紐から降ろし、マットに寝かせる。

私はソファーに深く腰掛け、【ボク】を見ていた。

 

 

「ほんと、可愛い赤ちゃん。」

「病気になんて見えない。」

「この子はどうなっていくのかな。」

「怖いな。」

「怖いよ。」

 

 

 

てんかんノート

寝ている赤ちゃん

入院時に女医から1冊のノートを渡された。

 

 

「てんかん発作の記録用ノートです。

発作が起きたら回数数えてこのノートに記録してくださいね。

 

はっきりとわかるスパズム発作なら〇、無呼吸とかビクつきとかその他の発作なら●してね。

ま、お母さんがわかるように書いてくれたらいいから。」

 

 

 

「ついでにこれも渡しておくね。

てんかんの教科書みたいなもんだから。

グレープフルーツや銀杏はてんかんの薬と相性悪いから食べないでね

薬が効かなくなるから要注意ね!」

 

 

 

中をちらっと見てみる。

頭を保護する帽子をかぶった子供の写真や、発作が起こった時に周囲はどのように対応すればいいか、などと書かれていた。

 

ペラペラと流し読みし、「まだ先の話か。【ボク】には関係ないな。」と本棚にしまった。

 

 

 

てんかんノートへの記録

 

それからというもの、私は常に【ボク】を意識して過ごしていた

 

「発作を見逃すまい」と常に視線の中に【ボク】を入れていた。

 

 

発作が起きると【ボク】に走り寄り回数を数える。

何回見てもその光景に慣れる事はない。

 

苦しそうで、辛そうで、まるで【ボク】じゃないみたいに表情が固まる。

見ていられない。

 

 

でも目を背けられない。

私しかいないのだから

 




 

地獄からの解放

赤ちゃんの手

 

なんとエクセグランを飲み始めてから2日目、数カ月続いた夕方の大泣きがなくなった

 

あの、【人生の終わり】みたいに全身を震わせて泣き叫ぶ1~2時間。

 

どうすることも出来ず、見ている事しか出来なかった。

時には大泣きの【ボク】を置いて逃げたくなった。

 

そんな地獄から解放されたのだ

 

 

 

「あれ?この時間、テレビの音が聞こえる…?

このキャスター、こんな声だったんだ…

なんで今までこのニュース番組がろくに見れなかったんだっけ…?」

 

 

いつもの大泣きがないことに気づくのに時間がかかった。

 

 

「【ボク】!

今日は泣かないの?

泣かなくていいの?

ママ嬉しいっ!!」

 

 

思わず【ボク】に抱きつく私

 

お姉ちゃんが横で【ボク】の頭を撫でている

 

 

お姉ちゃんも辛かったよね。

 

毎日【ボク】が泣いている時間は、ママがピリピリしていて…

 

保育所頑張って帰ってきたのにね。

 

絵本読んでほしかったよね。

 

好きなテレビ見たかったよね。

 

ニコニコでみんなで遊びたかったよね。

 

今まで沢山我慢してくれていたね。

 

ごめんね…

 

ごめんね…

 

 

お姉ちゃんの事をギュッと抱きしめた。

 

 

『きょうだい児』という言葉を知ったのは、その少し後のことだった。

 

 

こちらもCHECK

ACTH療法に向けて
【ボク】の物語(第11話)ACTH療法にむけて

続きを見る

 

 

こちらもCHECK

【ボク】の物語(第1話)。生きることの始まり

続きを見る

 

 

 

-子育て・発達凸凹
-,

© 2024 アスパラ Powered by AFFINGER5