子育て・発達凸凹

【ボク】の物語(第9話)潜因性と投薬開始

 

ハキハキと話す女医に連れられ、私と母は個室に入った。

すでにウエスト症候群と診断された今、どんな検査結果を聞かされても動揺しないような気がしていた。

 

私はウエスト症候群の原因より、【治るのか?】【将来どうなるのか?】

その事がばかりが気になっていた。

 




原因不明の潜因性ウエスト症候群

 

今回の検査入院で受けた検査の結果はこうだった。

検査結果

□CT ⇒ 問題なし

□MRI ⇒ 問題なし

□骨髄検査 ⇒ 問題なし

□血液検査 ⇒ 問題なし

□尿検査 ⇒ 問題なし

□視力検査 ⇒眼圧やや高め(許容範囲)

 

「全ての検査において、問題は見つかりませんでした。」と医師が言う。

 

今回の検査は治療法を決める為に行ったんですよ。

CTやMRIで脳の変形や傷があれば外科手術になるでしょ。

先天性代謝疾患などがあればまた治療法も変わってくるのでね。

 

この子の場合、ある特定の原因はないけれども発作が起きている

【潜因性のウエスト症候群】という事がわかりました。」

 

 

 

「原因がないんですか…?」

 

 

「じゃぁなんで毎日何十回も発作が起きてるんですか?」

 

 

疑問がふつふつと湧いてきた。

 

しかし、医師の説明を聞いて「これ以上突き詰めようとしても無駄だ」

「治療に専念しよう」と思わざるを得なかった。

 

潜因性ウエスト症候群とは

ウエスト症候群には2種類ある。

症候性ウエスト症候群

⇒染色体異常、先天奇形、脳血管障害、出血等、なんらかの原因により発症している場合

潜因性ウエスト症候群

⇒発症までの発達が正常であり、脳画像を含む各種検査で異常が見当たらない場合

・患者の約8割が症候性で何らかの異常が認められる。

・2割が潜因性で、潜因性の方が予後が良好な場合が多い。

・どちらも難治性のてんかんに変わりなく、90~95%に発達遅滞等が見られる

 

 

「潜因性の方が予後が良好な場合が多い」という医師の説明に、「よかった」と思える訳もない

 

母は相変わらず「家族がこんな病気になるなんて信じられない」という雰囲気で医師を質問責めにしている。

 

「治療すれば治るんですよね!?」

 

「治るまでどのくらいかかるんですか!?」

 

「ずっと病院に通う事になるんですか!?」

 

「薬を飲めば治るんですよね?」

 

 

 

そんなに簡単に【治る】訳ない…

 

この病気のことを恐らく何も調べていない無知な母に苛立った。

 

 

投薬開始

粉薬

 

3泊4日の検査入院が終わり、薬を飲み始める事となった。

【エクセグラン】という粉薬

 

母子総合医療センターからかかりつけ薬局へ処方箋をFAXし、帰りに取りに寄った。

 

「すみません。

処方箋をFAXしたんですけど。

はい、そうです。

お願いします。」

 

 

ここはお姉ちゃんが1歳の頃、初めて熱を出した時からお世話になっている調剤薬局。

 

少しケバくて、声がちょっとかれていて、「たぶん昔はやんちゃだったんだろうな」と思わせる40代後半の女性薬剤師。

 

普段訪れた時は「おだいじに~」と愛想よく言ってくれるが、それだけの会話だった。

 

 

薬を用意してもらっている間、カバンからスマホを取り出した。

真っ黒な画面に自分の顔が映る。

 

寝不足と精神的ダメージで目の下のクマがひどい。

入院中は病院の簡易シャワーで全身ボディーソープで丸洗いした為髪はボサボサ…

一応化粧はしているが、1日に何度も勝手に滲んでくる涙でマスカラを塗った意味はほぼない。

 

「酷いものを見てしまった…」

 

スマホの画面に明かりをつけ、笑顔のお姉ちゃんが写っている待ち受けを確認しただけでカバンにしまった。

 

 

「〇〇さん~!

お待たせしました。

 

エクセグラン出てるから。

この粉の薬、少量の水に溶いて飲ませて下さいね。

ジュースに混ぜても問題ないですよ。

 

スポイトで飲ませるのがいいと思いますよ。」

 

 

抱っこ紐から顔を出す【ボク】に目を向ける。

 

「下のボクちゃん?

脳波異常かな?

心配になっちゃいますよね。

薬が効くといいですね。

お母さん、ちょっと大変だと思うけど頑張って薬飲ませてくださいね。」

 

「はい…」

 

「1週間分出てますからね。

1日3回頑張ってね。

あ、シール入れときますね。

ボクとお姉ちゃん、2枚入れとくからね~!」

 

「はい…」

 

「おだいじに~!」

 

 

【人生終わり】みたいな顔した母親相手に、しっかり自分の仕事として対応してくれた事に救われた。

 

同情されて優しい言葉をかけられると、たぶんその場で床に泣き崩れてたぐらいにはギリギリだったから。




 

ただいま!

久しぶりの我が家だ。

 

私達が入院していた期間、夫とお姉ちゃんは義実家で過ごしていたので家の中はほとんどそのままの状態だった。

 

大きく息を吸う。

 

「ただいま、だね~」

 

【ボク】に声をかけると手足をバタバタとさせた。

 

 

 

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