子育て・発達凸凹

【ボク】の物語(第12話)何かが変わった日

 

期待と不安が入り混じる中、ACTH療法を受ける為の入院生活が始まった

 

予定では2日に1回ACTH注射をし、それを7回

その後、数日経過観察

3週間程度入院する予定。

 

 

大きな柵が付いた真っ白なベッドに寝かされ、

筋肉注射を2日に1回打たれ、

副作用の眠気で1日中ボーッとする生活…

 

 

【ボク】はどんな気持ちなんだろう

 

辛いかな。

痛いよね。

もっと自由に転がりたいよね。

お姉ちゃんのにぎやかな声が聞こえるお家の方が、ずっといいよね。

 

【ボク】の気持ちを考えると胸がしめつけられる。

 

「まだ何もわからない時で良かったね。」

と誰かに言われた。

 

それが腑に落ちなかった

 

 

私は

「年末に退院だね!

お正月は家族みんなで過ごそうね!

一緒に頑張ろう!」

と自分を励ました。

 

 

爽やかイケメン先生との出会い

オムツとぬいぐるみ

入院初日に若い男の先生が部屋に来た。

 

「はじめまして。

入院中、〇〇君を担当します。

よろしくお願いします。」

 

爽やかな笑顔!

 

30歳ぐらいだろうか。

「看護師さん達が放っておかないでしょ!」と思うぐらいの、万人受けする爽やかイケメン。

白衣がよく似合っている。

医者になる為に生まれてきたのではなかろうか。

 

 

そんなイケメン先生が担当してくれる事になり「なんだか出だし好調だ!」と思ったのは内緒。

 

 

「〇〇先生(女医)は外来などで忙しいので、入院中はボクが担当する事になるんです。

毎日様子見に来ますね。

 

可愛いですね~。

〇〇君、よろしくね~。」

 

なんというキラキラ笑顔!

よろしくお願いします~!笑

 

 

ACTH1回目

注射

いよいよACTH1回目。

毎回、朝の10時に注射をする事になっている。

 

看護師さんが来て「では打ちますね~」とさらっと終わった。

チクッとするのか、【ボク】は少し泣いた。

 

その後の様子を注意深く観察する。

特にいつもと変わりはないようだ。

 

心配なのは副作用。

 

ACTHの副作用

□不機嫌、興奮、睡眠寸断

□肥満、むくみ

□血圧上昇

□脳萎縮

□白内障、骨粗鬆症

□頭蓋内出血

□不整脈

□肝機能障害

 

初日は重い副作用は見られず、ただ眠気が強いのかほとんど1日中寝ていた。

 

昼間に60回以上もの発作が1シリーズ。

この頃は多くて40回程度だったので心配になった。

 

 

「ACTHして発作の回数が増えるなんて事、あるんだろうか…。」

 

 

その後も、数回いつも通り発作があり、

「ACTHは8割が発作消失する」という本で見た言葉に期待を持っていた私は、少しの絶望を感じていた。

 




 

 

この頃の【ボク】(自閉傾向あり)

寝ている赤ちゃん

この頃(生後5カ月~6か月)、【ボク】にはすでに自閉症の症状があった

(実際にはウエストに気を取られていて、そこまで自閉傾向は重視していなかったけど)

 

5、6カ月で感じた違和感

□笑わない

□目が合わない

□抱っこが嫌い

□不器用

□音に敏感

□火がついたように泣く

□ミルクの吐き戻しが多い

□力が強すぎる(力む事が多い)

 

 

笑わない、目が合わない、抱っこが嫌いは新生児の頃から続いていた

これは、本当に母として自信をなくす…

 

 

「不器用」というのはウエストで発達が遅れていたのもあるかも知れないが、

・おもちゃが握れない

・離乳食を食べる際、口が動かせない

などで感じていた。

 

 

寝返りや足をバタバタする際は、力が赤ちゃんとは思えない程強く

ベットの柵をガンガン蹴って凄い音を立てていた。

抱っこの際にのけ反る力も半端ない

 

 

にもかかわらず、手先は不器用で、おもちゃを握ろうとするが力が変に入りすぎて握れない

自分の意志ではうまく動かせないようだ。

 

 

この頃の私はウエスト症候群の事で頭がいっぱいで、その他の気になる事は全部「ウエスト症候群だから」だと思っていた。

 

 

 

ACTH2回目

笑顔の赤ちゃん

2回目のACHT注射後、なんと数カ月続いた発作がピタッと止まった

 

そして、発作が止まった次の日、【ボク】が笑ったのだ

 

私がいつも通り「ボク~!」と音の鳴るおもちゃを近づけると「ニコっ」と笑ったの!

 

ほとんど見た事ない【ボク】の笑顔。

 

私は自分でもびっくりするぐらい嬉しくて、何度も何度もおもちゃを鳴らしながら話かけた。

その度にニコニコ、時には手足をバタバタさせてキャッキャと笑うのだ!

 

 

その時、私の中で何かが変わった

 

 

この子を6カ月間育ててきて、はっきり言って楽しい事は一つもなかった

 

 

産んだ瞬間から違和感を感じ、

その後は言うまでもなく、無呼吸や発作、毎日何時間も続く大泣き、

抱っこを拒否され、目も合わず、笑わない【ボク】をただ母親の義務として責任を果たすべく過ごす毎日。

 

 

辛かったんだけど…

これからも辛い事があるってことはわかってるんだけど、

 

 

【ボク】の笑顔を見た時、ドバっと何かが溢れ出した

 

 

キューッと胸を締め付けられるような、愛おしいような、「守らなくちゃ」と思わされるような。

 

今まで押さえつけられていた母性が爆発した。

 

毎日、目の前にいたはずの【ボク】が今までとは違く見えて、可愛くてたまらない!

 

ほんと可愛いっ!

 

 

 

この日から約3カ月間、今までの時間を取り戻すかのように、【ボク】との幸せな時間を過ごす事になる。

 

3カ月後に地獄に突き落とされる事は知る由もなかった。

 

 

 

 

こちらもCHECK

【ボク】の物語(第1話)。生きることの始まり

続きを見る

 

 

 

-子育て・発達凸凹
-,

© 2024 アスパラ Powered by AFFINGER5