子育て・発達凸凹

【ボク】の物語(第11話)ACTH療法にむけて

ACTH療法に向けて

 

前回の検査入院で、【ボク】が潜因性のウエスト症候群だと診断されてから1カ月。

 

1日3回、エクセグランを飲み続ける。

てんかん発作をノートに記録する。

発作が心配で遠出はできない。

 

そんな毎日を過ごしていた。

 

夕方の大泣きがなくなったお陰で、以前よりは穏やかに過ごせていた。

 

とはいえ、毎日〇印で汚されていくノートを見れば、「薬を飲み続けても発作の回数が減らない」事は一目瞭然だった。

 




 

付け焼刃の知識

発作が減らないまま1カ月が過ぎ、母子医療センター受診の日。

サバサバした女医はいつもの調子で、「発作が止まらないのは予想の範囲内」とでもいう様な反応。

 

 

「この発作はね、長引けば長引く程ダメなんです。

発達が止まるでしょ。

とにかく発作を抑え込まないと。

お母さん、3日後から入院しましょう。

ACTH療法という、発作抑制に比較的効果がある方法を試しましょう。」

 

 

ACTH療法とは

ACTH療法は、薬の調整ではてんかん抑制が上手くいかなかった場合に適応。

ACTHとは副腎皮質刺激ホルモン(ステロイドホルモンが分泌される)の事で、ウエスト症候群の発作を抑制することが分かっている。

「脳の収縮」や、「免疫を強く抑える為、感染症にかかりやすい」などの副作用が強く出る事がある。

その為、効果と副作用のバランスで判断する。

投与方法は筋肉注射。

 

 

「ACTH療法は【副作用が強く出る】と本で読みました。

脳の萎縮は命にも関わると…

こんな小さい子に大丈夫なんですか?

 

ケトン食療法という治療法もあるんですよね?

ACTHのような危険な治療よりも、そっちの方がいいってことはないんですか?

入院して3食みてもらうとか…

無理なんですか?」

 

 

この1カ月で図書館に通い、あらゆる本を読んだ。

 

付け焼き刃の知識で医師に意見するなんてどうかしていたと思うが、我が子の為ともなると必死になれるものだ。

 

 

ケトン食療法とは

ケトン食療法とは、食事の内容を工夫することにより、ケトン体を糖分の代わりに脳のエネルギー源として活用できる状態に人為的にすること。

様々な治療でケトン食療法を用いられているが、てんかんに関しては発作減少の効果が期待できる。

脂質はケトン体を作りやすく、炭水化物(糖質)はケトン体を消す方向に働く為、

脂肪が多く炭水化物(糖質)が少ない食事を摂取する。

 

 

「ケトン食ね。

これは一般的に、ACTHとか、抗てんかん薬をいくつか試して効果がない場合に始める治療ですね。

あぶらギトギトの食事になるからね。

小さい子には結構きついですよ。

ウエストには効果ある場合もあるけど、まずは抗てんかん薬の治療からがいいかな。」

 

 

「…そうなんですか。

わかりました。」

 

 

「3日後に入院って言ったけど、風邪とかひいていたらできないからね。

ACTHは免疫を抑え込むから、普通ならなんともない風邪でも凄い重い事になりますからね。

 

あ、でもこの子ちょっと鼻水で出てるね。

3日後っていったけど1週間後からにしときましょうね。

1週間後にもまだ鼻水出てたら延期にするから気をつけてね。」

 

 

【とにかく発作を早く抑え込まないと】と言われた後に、【鼻水出たら延期】…

 

相当なプレッシャーだな…

 

12月

 

【ボク】が生まれて初めて迎えるこの寒い冬に、こんなに風邪をひかせない事に躍起になるなんて。

 

それが、難病の治療をするためだなんて。

 

だれが想像できた?

 

 

 

そんな事を考えながら、自分のコートで【ボク】を包み、家路に急いだ。

 




 

 

ACTH療法開始

病院

1週間が過ぎ、無事に【ボク】の鼻水も止まり、入院することとなった。

 

この日も私と【ボク】だけ

 

パンパンになったボストンバッグを背負い、貴重品を入れたショルダーバッグを肩にかけ、ベビーカーを押して受付に向かった。

 

入院病棟は同じく免疫が落ちた子供たちが多いので、感染症についての問診票など、詳しく書かなければならなかった。

 

飲んでいる薬のこと。

おおよその発達具合。

ミルク?離乳食?

気になることは?

出産時の記録は?

 

何枚もの質問に答え、その全部にサインをした。

 

【ボク】が機嫌よくてよかった。

赤ちゃん連れに、この量の書類を書かせるのは結構【酷】だと思う。

 

「事前にネットで出来ないものか…」

と今になって思うのは、コロナ禍があっての考えだろうか。

 

 

小さな赤ちゃん、大きな個室

 

一通りの入院手続きを済ませ、案内されたのは個室だった。

 

 

普通の個室…

ただ、

赤ちゃん一人にこの広さ、少しの違和感を感じた。

 

 

【ボク】をベッドに寝かせ、カバンを置く。

ベッドは高い柵で囲まれているので安心だ。

 

ハンガーにコートをかける。

 

着替えを棚に。オムツも同じく。

哺乳瓶やミルクは病院で用意してくれるが、「慣れた物しか受付けない」可能性がなきにしもあらずという事で一応持参した。

 

音がなるおもちゃは【ボク】の横に。

てんかんノートとペンはすぐに手の届く場所へ。

 

ゴミ箱にゴミ袋を設置。

コンセントの位置を確認。

 

 

ここでの1カ月が始まる。

不安が大きい。

でも期待もある。

 

 

どうか、発作が止まりますように…

どうか、副作用が出ませんように…

どうか、【ボク】が苦しむような事が起きませんように…

どうか、【ボク】にとって一番良い結果になりますように…

 

 

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