子育て・発達凸凹

【ボク】の物語(第4話)スーパーヒーロー

脳神経外科…

私は生まれて初めてそこに足を踏み入れた。

この薄暗い場所に小さな赤ちゃんがいる状況がなんとも不思議に思えた。

初めての脳波検査

今までの状況を先生に説明した。

メガネのすらっとした、理系の雰囲気を漂わせるその先生は、私が話す内容をパソコンに入力しながら聞いている。

診察室にはタイピングの音が響く。

いつもの小児科みたいに優しい雰囲気の看護師さんは横にいない。

アンパンマンの絵や人形もない。

殺風景なその部屋が緊張を高めた。

 

「わかりました。

脳波をとりましょう。

あちらの部屋にどうぞ。」




 

スーパーヒーロー

脳波検査室へ。

何もかもが初めて見る物ばかり。

色々な色のコードや大きなモニターに圧倒され立ち尽くす。

【脳波】という言葉から、「脳の信号が上手く機能しているかを調べるのかな?」なんてレベルの想像しかできなかった。

脳波とは

脳波とは、脳が発する電気信号のこと。

脳波検査では、脳の微弱な電流の変動を頭部に付けた電極でとらえ、波形として記録します。

てんかん、脳腫瘍、脳挫傷、脳出血、脳梗塞などの検査で用いられる。

大人用の大きなベットに寝かされる【ボク】。

動かないようにマジックテープで身体を固定される。

色とりどりのコードを次から次へと頭に貼られる。

最後には「それがずれないように」と頭全体を包帯でぐるぐる巻きにされた。

 

「人体実験みたい…」

 

私は映画を観ている観客。

この子は今から凄いパワーを手にいれてヒーローになるのかも知れない。

世界を救う、全人類の希望の子。

スーパーヒーロー

 

手際よく検査が進む様子をぼーっと見ながらそんな事を思っていた。

脳と心臓

頭に巻き付けられてから15分程たった。

通常は睡眠薬で寝かせて行う検査。

今回は飛び込みだったこともあり15分が限界だった。

【ボク】も次第に機嫌が悪くなり、マジックテープで固定されているにも関わらずお得意の馬鹿力でもぞもぞ動いている。

全ての包帯とコードを外してもらった時は少しスッキリした表情をしていた。

 

「ついでなんで心臓も見ておきますね」

 

あれよあれよという間に次は器具を胸に貼られていく。

モニターを見ながら説明された。

「これが右心室。

こっちが左心室。

右心房、左心房。

これが弁。

うん、問題ないよ。」

学生の頃に理科で習ったような、そんな単語を聞かされた。

でも、私の頭に残ったのは【問題ないよ】の一言だけ。

脳波検査の結果

少し待たされた。

さっきまで動きを制限されていたのが嫌だったんだろう。

【ボク】もぐずつき始めている。

抱っこが嫌いな【ボク】に私が出来る事と言えば、おもちゃを振って小さい音を鳴らす事ぐらい。

 

こんな時、抱っこでギューっとして「頑張ったね」って言えたらどれほどいいだろうな。

 

名前を呼ばれる。

脳波検査の結果を見せられる。

白い大きな紙に何本かの波打つ線が刻まれていた。

 

「この線が脳の右上、こっちが右下。

これが左上、これが左下。

波打ってるの、わかりますよね。

これね、普通は波が緩やかなんですよ。大人は。

でも、子供、いや、赤ちゃんはね、まだ脳が未熟だからこれぐらいの脳波の乱れはあるよ。

許容範囲ですよ。

成長するにつれてこの波が緩やかになってくるでしょ、

そうすると無呼吸もなくなると思いますよ。」

 

 

「ホントに?」

とは言えなかった。

 

「そうですか。今出来ることはないんですか?」

 

「成長すると減ってきますから。」

 

「薬とか!薬とかもないんですか?」

 

「薬はないですね。成長を見守りましょう。」

 

これ以上は言えなかった。

 

会計を済ませ帰り支度をしている時に【ボク】が横目に映った。

不自然な動きをしている【ボク】が。

 

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