子育て・発達凸凹

【ボク】の物語(第7話)夢の世界のはずなのに

木が生い茂る中にたたずむ巨大な建物。

母子総合医療センター。

いよいよ診断の時かも知れない。

心の準備は出来ていないかも知れない。

【ボク】に「行こうか!」と声をかけた私。

明るく言ったつもりだが、きっと声は震えていた。

 

夢の世界

緊張した足取りでベビーカーを押しながら入口へ向かう。

駐車場から入口まで向かう間に沢山の親子とすれ違った。

 

「なんであの子達は特別な部屋で遊んでいるの?」

小学生の頃、おもちゃがあって優しい女の先生がいるあの教室に通う子達を羨ましく思っていた。

歩き方がぎこちない女の子、何かあると自分の頭をペチペチと叩く同級生、「あ~!」としかお喋りできないお兄ちゃん。

そんな子達が集まる教室。

その時に感じた感覚がよみがえる。

 

そんな事を考えながら警備員が立つ横を通り過ぎ、中に入ると驚いた。

 

「何ここ…?」

「ホントに病院?…」

 

 

目に飛び込んできたのは広い院内の中心にドン!と置かれたカラフルで大きな汽車。

小学生でも十分遊べそうな滑り台。

そして信じられない程高い天井は吹き抜けになっていて、ガラス張りのそれからは明るい太陽の光が差し込む。

向こう側の壁には「どうやって貼ったんだろう?」と思わせる程大きな可愛い猫の絵。

 

子供達は汽車の中でハンドルを回したり高いところに乗ったりしてはしゃいでいる。

滑り台では順番を守れなかったのか小さい喧嘩が始まっている。

まわりに沢山ある机ではお絵描きをしている女の子。

ゲームをしている男の子。

 

ピアノが置いてある横には子供向けの雑貨屋さん。

向こうにはコンビニも。

向こう側にも出入口があって、そこを出ると一面芝生の広場。

親子がベンチに座ってお菓子を食べている。

お母さんも子供も笑顔だ。

 

夢の世界…?

 

衝撃を受けた私はキラキラしたその光景から目を離せず立ち尽くしていた。

【ボク】の手がベビーカーに吊るしているおもちゃに当たり「カラン」と鳴る。

「はっ」として受付に急いだ。

 

小児神経科

メガネ医師が引継ぎをしてくれたおかげで、混んでいるにも関わらずすんなりと案内された。

10以上の科がある中で案内されたのは「小児神経科」。

 

そこに座るのは予想外、女の先生だった。

「はじめまして。ウエストの可能性があるかもって?。動画あるんだって?見せてくれる?」

ハキハキと喋るその女医は、私の母親くらいの年齢だろうか。

目尻に細かいしわが目立つ。

足を組みながら話し、人の気持ちを考える様子もなく、話をトントンと進めていく。

でも不思議と腹が立たないのは、悪い人ではないという空気がその医師の全身をまとっているからだろうか。

 

【ボク】の発作の動画を見せる。

「ウエストの動きだね。スパズム発作。

一応脳波とるよ。眠る薬飲んで脳波室にいってね。」

 

言われるがままに脳波をとってもらった。

 

診断のとき

「お待たせしました。

お母さん、結論から言うとウエスト症候群で間違いないですね。」

 

白くて横にどこまでも続きそうな程長い紙を見せられる。

見たことある。

でも「前とは違う」とすぐにわかった。

以前、脳神経外科で見た脳波はこんなにギザギザしていなかった。

 

「ここ、とんがった波がいくつもあるでしょ。

これは普通ないんですよ。これはウエストの波。

これを見ると一発でわかるの。これをみたかったから脳波とってもらったんですよ。

診断出しときますね。ウエスト症候群ね。」

 

「ちょっとこれから大変になるよ。

投薬でまず…

…

…」

 

医師の早送りしているかのように聞こえる話はほとんど頭に入らなかった。

 

色々と説明されて一旦部屋から待合へ出た。

 

ずっと横に立っていた若い看護師が一緒に出てきて話しかけてきた。

 

「お母さん。大丈夫ですか?

 

びっくりしますよね。気持ちもついていかないですよね。

 

大丈夫ですか?」

 

倒れるように椅子にふらふらと座った私の横にしゃがんで顔を覗き込んでくる。

 

 

「わかりません。」

 

と一言発すると涙が溢れた。

 

涙が勝手に溢れて止まらなくなってしまった。

 

 

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