子育て・発達凸凹

【ボク】の物語(第2話)「息をして!」

5分にも、10分にも、1時間にも思えた。

【ボク】の顔がハッ!となり息をした。

みるみる唇の色が元通りになっていく。

完全に動きが止まっていた手足が動く。

こわばっていた顔の筋肉が一気にふにゃっと緩んだ。

笑っているわけではないがそう見えた。

 

実際は30秒ぐらいだっただろうか。

名前を叫び体を揺さぶることしかできなかった私は、【ボク】が生きている事を確かめるように顔を撫でた。

よかった…

よかった…

繰り返す無呼吸

そんなことがあったので、乳児の無呼吸について調べた。

  • 乳児は脳の発達が未熟で呼吸が乱れたり無呼吸になったりすることがある。
  • 乳幼児突然死症候群のリスクに繋がる可能性がある。
  • 短い時間の無呼吸でもチアノーゼ(唇が紫色になる)や、酸素不足による脳への影響がある場合がある。

中には「乳児には起こりやすいことで、成長すればなくなる」ということも。

「本当に?」

「成長すればなくなるの?」

またあんなに怖い思いをするのは嫌。

次また同じようなことが起これば、本当に【ボク】が死んでしまうのではないかという不安があった。

でも「成長すれば自然になくなる」というネット上の言葉に「大丈夫」と言われているような気もしていた。

次の日、朝のミルクを飲んでリビングで転がっている時にまた【ボク】の動きが止まる。

「あ、まただ!」

昨日と同じように「【ボク】!」と声をかけるが視線は遠くを見ていて、呼びかけも聞こえていない様子。

顔が固まり唇が紫になっていく。

苦しそう…

 

「救急車!」

119にダイヤルしようとしたその瞬間、「ふっ」と【ボク】の力が抜ける。

息を吸い、顔色が良くなっていく。

何事もなかったかのように手足をバタバタ動かしている。

 

「なんなの?」

「どうすればいい?」

「こんなのが毎日続く?成長すればなくなるっていつ?脳への影響はないの?」

疑問が次から次へと湧き出る。

「普通じゃない」ことだけは感じていた。

でも普通じゃない事を認められず、「今だけ」だと自分に言い聞かせていた。

小児科受診

ミルク

その日、無呼吸があってすぐに小児科を受診した。

お姉ちゃんも予防接種はここの病院で全部受けている。

通い慣れた病院だ。

数年前にできた新しい病院で、片足を引きずって歩くふくよかな男の先生。

「目もあまり合わさない先生だな…」「子供の事好きじゃないのかな?不愛想だな」と以前から思っていたけど、「ま、予防接種だけだし」と、自宅から近い事と空いている事だけの理由でそこに通っていた。

 

その日もいつもと同じ。

目も合わさず「どうされましたか?」と。

私は無呼吸の事について話した。

すると初めて私の顔を見て、それから【ボク】の顔を見た。

「何秒ぐらい止まっていましたか?」

「わかりません。30秒ぐらいの感覚でした。」

「どんな様子?」

「動きが止まって唇が紫になりました。

顔はこわばって手足の動きは止まりました。

呼びかけにも反応しません。」

「その後は普通?」

「普通です。ミルクも飲むし元気だと思います。」

一通り話をし、内診した。

 

結果を伝えられる。

「生後間もない赤ちゃんは脳の発達が未熟で無呼吸になる事があります。

様子を見てみましょう。

念のため、息を止めたら時間を計っておいて。」

予想通りの回答。

「何もできません」と言われているようで心底がっかりした。

すがる思いだったのに。

【ボク】が息を止めている数十秒、不安に押しつぶされそうな思い、誰かにわかって欲しかったのに。

肩を落として帰宅した。

 

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